低学年から集団塾に通う危険性

中学受験の嘘

この記事で言う低学年とは小1と小2のことを指します。

最近は小1から大手の集団塾に行かせるご家庭も増えてきているようです。

小1の最初から通うとなるとその準備をするのは年長からです。

SAPIXのいくつかの校舎は小1時点で既に満員になっているという話も聞きます。
この中学受験のある意味過熱ともいえる状況はどうなのでしょうか。

私から見ればこれは異常な状態に思えます。
集団塾に行くのは小3の2月(新小4)からで十分だと考えます。

以下にその理由を述べていきます。

低学年から集団塾に行くことのメリット

まず、小1、小2から集団塾に行くことのメリットについて考えます。

  1. 校舎の座席を確保できる
  2. 塾通いに慣れさせる
  3. 先取りして貯金が作れる

1.については注意が必要です。

確かにSAPIXの校舎の一部で小1の時点で満員になっている校舎があるのは事実です。

ただ、新小4の空き状況(毎年2月)を見るとほぼ全ての校舎で空きがあります。つまり小1の時点で焦って入らなくても新小4(小3の2月)からでも入れる校舎はたくさんあります。

実際に私が確認したところ2023年の1月の時点ではSAPIXの9割以上の校舎が新小4の空きがありました。

2.については塾通いに慣れるということのメリットはたしかにあります。

ただそれが小1である必然性はどこにあるのでしょうか。

新小4から塾通いに慣れさせるのでも全く問題はありません。

受験本番までそこから3年もあります。

3.の先取りの貯金はほとんど意味がありません。

計算練習を先取りしておくことはある程度はメリットがあります。

ただ、それは大手の集団塾である必要はありません。公文やろばんで十分です。

そして大手集団塾で得たアドバンテージは新小4から参戦してきた地頭が良い子にあっという間に追いつかれます。

低学年から集団塾に行くことのデメリット

次に小1、小2で集団塾に行くことのデメリットについて考えます。

  1. 早い段階で塾に通わせることによって小学校高学年あたりで息切れをしてしまう。
  2. 途中から入ってきた地頭が良い生徒によって偏差値が真ん中の方に寄っていき、あたかも学力が伸び悩んでいるかのような錯覚に陥る。
  3. 悪い意味で集団塾に慣れてしまう。

1.についてです。これは私の塾で何度も見てきたことです。

低学年から大手集団塾に通い、5年生や6年生になってうちの塾を集団塾の補習として利用している子はとても疲れ果てています。

親との衝突も多く、親御さんが手に負えなくなってからうちに駆け込んでくることが多いです。

宿題を写してくる子もこういったお子さんに多いです。

もちろん低学年で集団塾に通い始めて順調にいっている子はうちの塾には来ていないからだという可能性はあります。

しかし、うちの塾で中学受験に成功している子の多くは集団塾に通い始めたのは新小4以降というのも事実です。

2.についてはこれも多くのお子さんが経験することです。

偏差値は母集団が多くなっていくとより正確になっていきます。

小3までは少ない母集団の中で上の方にいた子が小4から中学受験に参入してくる地頭の良いライバルの存在によって「偏差値が下がる」という現象は数多く見てきています。

SAPIX偏差値が小3までは65だったのが小4になると59になるようなパターンです。

実はこれでも学力は上がってきているのですが、偏差値が下がることによってあたかも伸び悩んでいるかのような印象を受けます。

偏差値とは全体での位置づけなので偏差値が横ばいであれば他の人と同じように進んでいて、偏差値が下がったということは他の人と同じように進むことができなかったということを意味します。

どちらの場合も学力が伸びていないということではありません。ここを理解していない人は非常に多いです。

また、小3までは3クラス中の一番上だったのが小4になってクラスが9クラスになると3番目のクラスになるといったことも起きます。

これは小3までは上中下の「上の下」にいたのが小4になってよりクラス分けが細分化したことによって起こる現象です。

これは本人にとってもご家庭にとっても大きくやる気を削ぐ要因となりかねません。

ずっとトップクラスにいる上位3%以外の人は自己肯定感を失うことにもなりかねません。

3.も要注意です。初めての塾通いというのは子供にとって良い意味でも悪い意味でも刺激があります。

最初は嫌だった子でも通っていくうちに知的好奇心を刺激され、友達もできて楽しくなっていくことがよくあります。

そういった良い意味での刺激が4年も経つと薄れていくという現象も私はみてきています。

新4年から始めていれば知的好奇心をくすぐられ新鮮な気持ちで塾に通い、慣れてきた頃には受験まであとちょっとというのが理想的です。

それを早い段階で始めてしまうと、たるんでくる時期とライバルが増える時期が新小4の時にいっぺんにやってくるということがよくあります。

低学年の時にやっておくべきこと

低学年まで(小2まで)にやっておくべきことは楽しく勉強をできる下地を作ることです。

計算はできていた方が良いので公文やそろばんは有効です。

ただし、これも本人が嫌がるようであれば無理に通わせる必要はありません。

勉強以外の習い事も同じです。

ご存知の通り、子どもの言うことはコロコロ変わります。

よって少し様子を見て、習い事に通うのが辛そうなのであれば止めてしまっても構いません。

楽しく通える日が2年後3年後にやってくるかもしれません。

塾は嫌なもの、勉強はつまらないものという観念を植え付けてしまうことの方がよっぽどリスキーです。

動物園や博物館に連れていって興味を持てばそれで良し。持たなければ自由に遊ばせるので良し。

そして子どもの「なぜ」「なに」に答えられるようになることが一番大事なことです。

特に理科と社会に興味を持てるかどうかは小2までが大事です。

子どもがせっかく好奇心を持って聞いたとしても親が答えられなかったら途端に興味を失ってしまいます。

そのためには親御さんもお子さんに聞かれて分からないことがあったら一緒に調べていきましょう。

繰り返しになりますが、低学年の時に一番大事なことは勉強を嫌いにさせないことです。

まとめ

以上述べてきたように、低学年からの塾通いはデメリットがメリットを上回ると考えます。

低学年は自由に遊ばせて1日10分程度の学習習慣がついていれば十分です。学年×10分集中できれば十分です。

そして「小1、小2で集団塾に通わせるのは慎重になるべき」というのが私の考えです。

周りの保護者やTwitterの意識高い系の情報に惑わされず、お子様にとって最適な時期に塾通いをすることが中学受験を成功させるために重要なことです。

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