この記事では個別指導塾について考察していきます。
個別指導塾の授業形態
まず前提として個別指導塾については指導形式において3つの形式があります。
①完全マンツーマン指導(講師1人に対し生徒1人)
②1人対複数の個別指導(講師1人に対し生徒2人~3人)
③講師1人対生徒5人程度の個別指導(いわゆる自立型個別指導)
ここではこれらのサービスを行っている塾を個別指導塾と呼びます。
一般的に費用は①>②>③という順で完全マンツーマン形式が一番費用がかかります。
①と②は「授業で解説している時間」「つきっきりで見てもらえる時間」などで程度の差はありますが、③の自立型指導は「自習していて分からなかったら質問をする」という授業形態なので①②とは質的に大きく異なります。
完全マンツーマンは確かに魅力的ではありますが、個別指導であっても問題を解く時間は必要なので講師の力量があれば1:2の指導形式でも問題はないです。
お金に糸目をつけないということであれば完全マンツーマンの方が良いでしょう。
自立型個別指導は自主的に勉強をして適格な質問ができる生徒でないと向いていないと言えるでしょう。
個別指導塾の講師の質
個別指導の講師は大きく分けて2種類います。
①学生アルバイト講師
②社会人講師(いわゆるプロ講師)
ほとんどの大手個別指導塾では①の学生アルバイトが中心です。平均勤続年数が半年くらいの個別指導塾も沢山あります。
②の社会人講師でもきちんと正社員として雇われている人は稀です。
多くの場合「時給〇円」のアルバイト講師です。
学生講師との違いは大学生、大学院生ではないということと経験が長いということくらいしかないでしょう。
そもそも優秀な講師であればもっと給与の良い集団授業の講師をしているはずです。
時給〇円といった給与体系で働いている「プロ講師」なるものは少し給与の高いフリーターと思っても良いでしょう。
もちろん学生アルバイトであってもプロ講師であっても良い講師は沢山います。
しかし全体としてみた場合は集団塾の講師より指導力は劣ると思った方が良いです。
個別指導塾の講師の質を知るには求人広告を見るべし
個別指導塾の講師の質を知るには求人広告を見れば分かります。
入塾を検討している塾の「塾名 求人」で検索してみて下さい。
「1コマ90分2,400円(時給1,600円)」なら良い方で、東京都でも最低時給に近い時給1,100円で募集している塾もあります。
コンビニのアルバイトと同じような時給で塾講師のアルバイトをしている学生さんは沢山います。
(最近のコンビニの店員さんはやることが多岐に渡るので大変かとは思いますが)
給与が安ければ離職率も高い
当然のことながら給与が安ければ離職率も高いです。
受験生なのに年度の途中で講師が変わるといったこともあります。
そして講師に支払わる給与が2,500円でも授業単価が6,000円を超えるような個別指導塾は珍しくありません。
個別指導塾だけで中学受験をするのはとても危険
個別指導塾だけで中学受験をするのはとても危険です。
それで良いのはゆる受験くらいです。
以下にその理由を述べます。
競争意識が芽生えない
個別指導塾の授業は生徒個々の状況に応じて行います。
教室内で同じ問題を同時に解いている仲間はいません。
そのため自分がどれだけできているのか、もしくはできていないのかが分かりません。
つまり個別指導塾だけだと自分の立ち位置が分からないのです。
大手の集団塾はその点はやっぱりしっかりと競争心を駆り立てるシステムが出来上がっています。
切磋琢磨する集団授業で競争意識が芽生え、月ごとのテストで自分自身の立ち位置が可視化されます。
競争意識が芽生えないというのが個別指導塾の最大のデメリットです。
モチベーションが上がらない
先ほども述べたように個別指導塾のみで受験勉強をしていると自分がどの位置にいるのかが分かりにくいです。
いわば薄暗くて頂上がどこにあるかも分からない登山道を一人で登るようなものです。
また個別指導塾はなかなか塾での友達もできにくいので、同じレベルの友達と切磋琢磨することも少ないです。
つまり個別指導塾ではモチベーションが上がらないというのは、講師の力量の問題というよりも個別指導塾のシステムそのものが原因です。
一番最悪な失敗パターン
中学受験でお金を散々かけたのに満足の行く結果が得られない最悪のパターンは以下です。
1.大手塾のカリキュラムについていけなくなる
2.個々のペースに合わせてくれる個別指導塾に転塾
3.危機感を煽られ週10コマ以上取らされ、月10万以上の課金
これは中学受験の課金地獄に陥っているパターンなので注意しましょう。
そもそも大手塾のカリキュラムについていけなくなる時点で中学受験の撤退を考えるか、志望校を大幅に下げた方が良いです。
こんな個別指導塾は要注意
学習塾も営利団体ですから利益を得るのは当然です。
ただし、利益のみを追求している塾は要注意です。
下記に具体例を挙げます。
・とにかく契約書にサインさせよう急がせる
・教務が受験のことを分かっておらず営業ばかりしてくる
・講師の時給が安い
・成績が上がらないことを相談したらとにかくコマ数増を提案してくる
まとめると生徒のことよりもお金のことばかりを考えている塾です。
正しい個別指導塾の使い方
ここまで個別指導塾の悪い点ばかり述べてきましたが、個別指導塾も使い方によっては良い効果をもたらします。
※以降は中学受験限定のお話ですので中学生や高校生が個別指導塾を使う場合は参考になりません。
大手塾の併用で使う
それなりの進学校を狙う中学受験生が個別指導塾を使うのであれば大手塾の併用で使う方が望ましいです。
具体的なやり方としては
1.質問する問題などを事前にを決めておく
2.講師に解説をしてもらう
3.解説してもらった問題の解き直しを授業中に行う
1は少し注意が必要です。個別指導塾を併用する方が陥ってしまう罠として「分からなかったら(個別指導の)塾の先生に聞けば良い」となってしまうことがあります。
なるべく自分で考えてから分からなかった問題を質問をするようにしましょう。
ちなみにできる子は質問の内容が具体的です。
「自分はこのように考えたけど、この考え方の何が違うのかを教えて欲しい」と言うようになったらかなり見込みがあります。
2も注意が必要です。
大手塾では習っているやり方と同じやり方で教えてくれるのであれば良いのですが、違うやり方で教わるとお子さんによってはキャパオーバーとなってしまうことがあります。
塾講師歴が長い方には頑固な方も多いので、自分のやり方のみを押し付けるのはマイナスになることもあります。
3は実はあまり行っていない個別指導塾が多いようです。
解説を受けた時は分かってもテストになるとできない理由のほとんどが「解説を受けた問題の解き直しを行っていないから」と考えられます。
解説された問題を「授業中に解き直す」ということは算数において特に重要です。
テストの時には親も先生も隣にいません。一人で解けるようにならなければいけません。
算数や理科は解説してもらった問題をその講師がいる前で解くことにより、より定着が図れます。
自習室として使う
多くの個別指導塾は自習用にも使えます。
家で衝突が絶えない場合は自習可能な個別指導塾に行かせて、他の大人(大学生でも構いません)の監視が行き届いた上で勉強をした方が効率的に学習することができるでしょう。
中学受験での最大の失敗はそれによって親子関係が壊れてしまうことです。
家で争いが絶えないのであれば自習可能な塾で自習に行かせましょう。
自習中に質問対応してくれる塾があればなお良いです。
自習用に使う場合は曜日と時間を決めてルーチン化しましょう。
個別指導塾に入塾する前に確認するべきこと
個別指導塾を利用する場合は契約書にサインする前に以下を必ず確認しましょう。
①体験授業で担当した講師が入塾後も担当するのか
②年間の総額でいくらかかるのか
①については本当に注意が必要です。
体験授業の時に人気のあるエース講師が授業を担当し、入塾した後は別の講師が授業を担当するといった話はとてもよく聞く話です。
よって、①については体験授業を受ける前に確認しましょう。
体験授業を受ける前に確認しないと塾側も実際には入塾後には担当できない人気講師で体験授業を受けさせることがあります。
②についてもよく確認しましょう。
最初は週1コマで入塾したはずなのにどんどんコマ数を増やされて、季節講習になると更に沢山の授業受講を勧められいつの間にか金額が膨れ上がっているということはよくあります。
「それは生徒によって異なりますので一概には言えません」とお茶を濁すようなことがあれば「過去の生徒は平均でどれくらいかかっていましたか?」としつこく食い下がりましょう。
総額でいくらかかるのかを提示しないままいつのまにか費用が膨れ上がっているというのはサービスの提供者として誠実な態度ではありません。
まとめ
中学受験において個別指導塾を使う場合は使い方によってはお金ばかりかかって失敗することもあります。
しかし大手塾との併用であれば良い効果をもたらすこともあります。
私自身個別指導塾を経営しておりますが、幣塾のみでの中学受験は「ゆる受験」以外は勧めておりません。
ゆる受験についてはリンクをご参照下さい。
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