中学受験生の保護者様から以下のような相談をよく受けます。
特に小学6年生の保護者の方から受ける相談です。
・子どもに受験生としての自覚が足りない
・なかなかやる気になってくれない
・試験の結果が悪くても危機意識が足りていない
今回はこれらが多くの子どもに共通して起きる理由を考察していきます。
親の時間軸
皆さんは年令を重ねてからこんなことを感じたことはないでしょうか。
・ついこの前に年が明けたばかりなのにもう子供が新学年
・あの衝撃的な事件からもう10年
・高校時代からもう〇年経ったなんて信じられない
・親戚の子どもがいつの間にか大きくなっている
私は上記は全て思い当たります。
30代以上の方ならほとんどの方がそう思うのではないでしょうか。
逆に自分が小学生の時を思い出して下さい。
6週間程度の夏休みだったのにとても長く感じたのではないでしょうか。
19世紀のフランスの哲学者・ポール・ジャネが発案したジャネーの法則には「人生を80年とすると体感時間としては19才で半分終わっている」とう説もあります。
嘘ジャネーかと思いますが、それが本当だとしたら悲しいですよね。
それはともかく、大人にとっては自分のお子さんが小6の時に夏休みになると「六か月後には入試本番だ」となり、三か月前になると「あと三か月しかない」となります。
小学6年生の保護者の方から夏休み以降に受ける相談の多くは深掘りすると「もう〇ヵ月後の受験が迫っているのに子どもに危機感が足りない」といったことに集約されます。
小学生の時間軸
小学生の時間軸は大人の時間軸とは違います。
先ほど例に挙げた「ジャネーの法則」の中に「人間の体感時間はそれまで生きてきた年齢に反比例する」というものがあります。
年齢が3倍だと体感時間は3分の1倍になるということです。
具体的な例だと「体感として30才の1時間は10才の3時間に相当する」ということです。
つまり小学生にとっての半年後は大人にとっての1年半後くらいに相当するのです。
これをご覧になっている大人の方は1年半後のことを想像してみて下さい。
あまり具体的なイメージがわかない人も多いのではないでしょうか。
もしくは「まだ先のことだからとりあえず目の前のことを片付けよう」と考える人も多いのではないでしょうか。
それが小学生にとっての半年後です。
親と子どもの危機感の違いの多くはこの体感時間の違いによるものです。
いつ受験生としての自覚を持つのか
とは言っても入試まで1年を切っている段階でずっとのん気な状態でも困ります。
しかしこれをやれば危機感を覚えるといった特効薬的な処方箋はありません。
我々が抱えている多くの問題は時間が解決してくれます。
今までの経験でいうと遅くても小学6年生は12月くらいになるとようやく受験を自分事と捉え,危機感を持つようになります。(9月くらいからそういう意識の人もいますが)
「12月になってから?」と思う人もいるかもしれませんが、子どもにとっての2か月後は大人にとっての半年後と考えれば納得がいくのではないでしょうか。
それまでは待つしかありません。
親ばかり焦っていても子どもには伝わらないので無駄なエネルギーを使うだけ時間の無駄です。
もちろん宿題の答えを写していたり、約束した時間になっても一向に勉強に取り掛からないような状態がずっと続いているようであれば早めに対処する必要があります。
しかし半年も切っていないのに沢山の宿題を一応はこなして、組み分けテストのテスト中だけでも頑張っているだけで十分立派です。
最後の二か月こそが最も重要な体験
ほとんどの子どもにとって中学受験は最初の本格的な受験です。
私はこの中学受験で得られる「体験」で最も重要な期間は最後の二か月だと思っています。
どんな子でも最後の二か月は必死になります。
受験を自分事と捉え、一生懸命頑張った結果としての合否はその後の人生でも大事な体験になります。
できればそれが合格であって欲しいものです。
まとめ
「中学受験をする小学生とその親の危機感の違いは、大人の時間軸と子どもの時間軸は違うことが理由である」ということを述べてきました。
そして親と子どもの危機感の違いは時間が解決してくれるということを述べました。
私は保護者の方から子どもの勉強に対する姿勢への不満を聞くとたびたび思うことがあります。
「子どもは子どもなりに頑張っているのになあ」と。
ですので私は保護者の方が多くを求め過ぎている場合、それをなだめ、どちらかというと子どもの側に立ってアドバイスすることが多いです。(もちろん子どもの側に多くの問題がある場合は別ですが)
皆さんも生まれた時は「無事に生まれてきてくれてありがとう」だったのに、たかだか10年かそこらで多くを求め過ぎではないでしょうか。
今一度冷静になって中学受験への向かい合い方を考えてみては如何でしょうか。
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