私はTwitterの固定ツイートで
『学力は小4くらいでほぼ決まっており、その後の学歴もその学力と大きく乖離することはあまりありません。
そして小4の時の学力は遺伝と共有環境で7割方決まっています。
「やればできる」分野は限定されています。 それを認めないと教育産業に無駄にお金を使うことになります。 と、私は思っています。』
と書いています。
この記事ではこれを深掘りしていきます。
学力は小4くらいでほぼ決まっている
学力は小4くらいでほぼ決まっています。
まず言い訳がましいのですが「ほぼ」と言っているので「全て」ではありません。よって何割かはそれ以降に伸ばせます。
それが塾や家庭教師の役割ですが、逆に言うと塾や家庭教師はその程度の役割しかありません。
教育によって伸ばせる学力には限界があります。
塾産業に関わる者がそれをわざわざ言う必要はありませんが「子どもには無限の可能性があります」といった嘘を言っている業者は私は信用しません。
学力については偏差値45の人を60に伸ばすことはやり方次第では可能です。
しかし偏差値30の人を70に伸ばすことはほとんど期待できません。
もしそれが起こり得るとしたら「最初のテストで解き方の順番が分からなかった」などのイレギュラーな偏差値30か「一番悪かったテストのある科目の偏差値が30だった」といった場合のみです。
そういった数字のトリックを使い、例外的な個別具体例があたかも全ての子どもに通用するかの印象を与え、それを売りにしている塾や家庭教師は数多く存在します。
しかしほとんどの場合、小4の時の能力がそのままその後の学力に反映されています。
小4の時の学力は遺伝と共有環境で7割方決まっている
小4の時の学力は遺伝と共有環境で7割方決まっています。
では共有環境とは何か。
それは平たくいうと家庭環境のことです。
習い事や学校、友人関係などの環境ではなく同じ家庭の子が共有している環境のことです。
複雑な家庭でない限り「兄弟であれば共有環境は同じ」と考えて問題ありません。
学力が遺伝と共有環境で7割方決まっているというのは私の意見ではなく、行動遺伝学で双生児研究のデータから根拠を持って指摘されていることです。
IQは遺伝による影響が65%、共有環境が21%(合計81%)といったデータ(安藤寿康の双生児研究)もあるくらいなので、7割というのは少なく見積もってもそのくらいあるということです。
人の身長を決定づけるのは大部分が遺伝であり、共有環境はほとんど関係ないということは納得される方も多いとは思います。
しかし実は学力も遺伝による影響は5割以上あります。
遺伝が5割、共有環境が2割くらいとすると幼児教育や習い事、塾などの「非共有環境」が学力におよぼす影響は残り3割に留まります。
個別具体例を一般化してはいけない
家庭教師の謳い文句で「偏差値30を65までに伸ばした実績あり」といったものがあります。
これは嘘をついている訳ではないのでしょう。
また「進学校の国語の定期試験で1回だけ偏差値30を取ったことある子が慶應大学に英語と小論文で受かった」という話も本当でしょう。
しかしこういった個別具体例を一般化して自分にあてはめるのは非常に危険です。
もしそういった家庭教師や塾講師が、担当した生徒(少なくとも100人以上の実績は必要です)の9割以上の偏差値を上げたというならまだ分かります。
全科目できちんと投げ捨てずに解いたのに数か月偏差値30だった生徒。
こういった生徒の9割を1年後に安定して偏差値70前後まで押し上げたというのであれば是非その指導方法をご教授願いたいです。
しかしそこまで具体的に実績を掲げている家庭教師や塾講師は私は見たことがありません。
実績というのは全体の実績が大事なのであり、数百人のうちの何人かのうまくいった生徒の個別具体例を喧伝している家庭教師や塾の謳い文句はあてになりません。
なぜならそれは一部の成功例のみを挙げており、上手くいかなかった人のことは言及していないからです。
個別具体例を自分にあてはめている時点でその業者の思うつぼです。
個別具体例は個別具体例であり、重視するべきは全体の傾向です。
では教育への投資は意味がないのか
それでは教育に投資することは意味がないのか。
そんなことはありません。
ここまで書いていることは逆の見方をすると「残り3割は教育によって変えられる」ということです。
従って私が主張しているのは「できることを見極めて教育に有意義な投資をしましょう」と言うことです。
「学力は教育によって、親の働きかけによって、学習方法を改善することによって、課金することによって、良い指導者に巡り合うことによって、何とかなる」と考えるとそれを喧伝する教育産業によって酷く騙されることになります。
塾や習い事によって伸ばせる能力には限界があります。
私が一番伝えたいことは最後の『「やればできる」分野は限定されています。 それを認めないと教育産業に無駄にお金を使うことになります。』の部分です。
できることとできないことを見極めた上で、本当に効果的な投資をしましょう。
まとめ
私の固定ツイートを読んで多くの人が「生まれでほとんど決まっているから勉強しても意味がない」と捉えているようです。
私の文を誤解している人が多いようですが、誤解を招くような発言をしてしまって申し訳ないとは全く思っていません。誤解する方が悪いとしか思っていません。
学力というのはお金を使えば使うほど伸びるものではありません。
塾ができることは限定的です。
それを踏まえた上で教育に意味のある投資をしないと、お金を失うだけでなく、お子様の自己肯定感を奪うことになりかねません。
できることを見極めて教育には有意義な投資をしましょう。
コメント