よく「子どもは褒めると伸びる」と言われます。
いや、子どもだけではなく人材育成の場面でも「部下は褒めて伸ばせ」といったことがよく言われます。
今回の記事では「褒める」ということをテーマに考えていきます。
褒めると伸びるは本当か
そもそも「褒めると伸びる」というのは本当のことなのでしょうか。
まずはそれについて考えます。
褒めると伸びるは科学的に実証されている
先に結論を言ってしまいます。「褒めると伸びる」は科学的に実証されています。
「ピグマリオン」という言葉は聞いたことがあるでしょうか?教材や塾名となっているアレですね。
ご存知の方も多いかと思いますが、これは教育心理学における心理的行動である「ピグマリオン効果」からきています。
ピグマリオン効果とは「教師の期待によって学習者の成績が向上すること」を指します。「教師期待効果」「ローゼンタール効果」とも呼ばれます。
ピグマリオン効果の実験
ピグマリオン効果のもととなった実験は1964年にアメリカの公立小学校で行われています。
実験の概要は下記の通りです。
①学者が学級担任に「このテストはハーバード式の学力能力予測テストです」と言って、普通の知能テストを生徒に行わせる。そして「このテストは今後数か月の間に成績が伸びてくる生徒を割り出すための検査です」と説明。
②学者は試験結果を無視してランダム(つまりいい加減)に生徒を選び「この生徒は今後伸びる子だ」と伝える。
③すると実際に教師の期待が高まった生徒の成績が伸びた。
という実験です。つまり「伸びると期待されて教育を受けた生徒は実際に成績が伸びた」というのがこの実験の要点です。
ピグマリオン効果の逆として「ゴーレム効果」というのがあります。これは「他者から期待されていないと感じることによって、その通りにパフォーマンスが低下してしまうこと」を指します。
・子どもが理系脳だと思っていたら本当に国語が苦手のままで停滞している。
・図形の問題が苦手だと思っていたら学年が上がって更に苦手になった。
これらは思い当たる保護者の方も多いではないでしょうか。
良い褒め方
それでは実際に能力を最大限引き出すためにどういった褒め方が良いのかを具体的に見ていきましょう。ここでは私が塾講師として生徒をどのように褒めているのかを、実際に効果があったものを中心に述べていきます。
過程を褒める
テストの結果が良かったときは自然と褒めることが多いのですが、そこはあまり意識して褒めません。テスト結果が良かったときは自然と褒めるので、こちらが意識しなくても本人のやる気は上がってきます。
それよりもテストの結果に関わらず、その途中での宿題のやり方や自習中の「最近良く頑張っているね」という声掛けが大事だと思っています。
正しいやり方をしている時はその過程を褒めることがその後の取り組み方に大きく関わっていると私は考えます。それこそが次の頑張りにつながってくるからです。
具体的に褒める
何がどう良かったのかを具体的に褒めます。「先週は定価と売値の違いもあやふやだったけど今回はちゃんと整理できるようになったのは凄い」「接続語の問題で間違えないのは文章の流れをきちんとつかんでいるからだ」と具体的に褒めると着実に自己達成感が育まれていきます。
他人に勝つことよりも過去の自分に勝ったことを称えるべきです。
さりげなく褒める
これも私が意識的にやっています。「〇〇さんはもともと頭が良いから~」「〇〇君は最近頑張って勉強しているから~」ということを会話の中でサラッと言って暗示をかけています。特に自信をなくしてしまていたり、親から怒られて落ち込んでいる子に言っています。
あまり大げさに褒めると子どもにはバレてしまうものです。
いずれの場合もいつも褒めるのではなく、たまに褒めるよう心掛けています。毎回褒めると嘘っぽく聞こえてしまうので。
良くない褒め方
次に良くない褒め方を見ていきます。これも私が今まで接してきた生徒または保護者の方から聞いたことをもとに述べています。
結果のみを褒める
例えばテストで良い結果を出したとします。そこで「凄いよ。良く頑張ったね。」と褒めるのは基本的には良いことです。しかし別の見方をすると「結果が良かったときしか褒めてくれない」となりかねません。
これは繊細なお子さんにありがちなことですが「次も良い点数を取らないといけない。」ということがプレッシャーとなって、楽しかったはずの勉強がつらいものになってしまいかねません。実際にそういう生徒さんを何人も見てきました。
もちろん良い点数を褒めるのは良いことですが、そのとき「だけ」しか褒めないのは良くないことです。頑張っている過程も意識して褒めて上げましょう。
他の人と比べて褒める
これについては多くの人が「そんなの知っているよ」と思われるでしょう。しかし実は多くの保護者の方が無意識にやっています。それは偏差値が伸びないと嘆くことです。
別の記事で述べますが、偏差値は全体での位置づけであり、相対的な評価でしかありません。
偏差値を維持しているということはそれだけ頑張っているということに他ならないのですが、それを評価していない保護者の方はあまりにも多いです。
本人なりに頑張っているそのことを褒めて上げるべきです。
まとめ
私が長年塾講師をやってきて得たものの一つに「大抵の子どもは大人が思っているよりも洞察力が鋭い」というものがあります。この記事はそのことをもとに書きました。
「褒めると伸びるのはその通り」「褒め方にも良い褒め方と良くない褒め方がある」ということを述べました。
これまで述べてきたことを実践するのは難しいということは知っています。
しかし褒めたあとで、もしくは叱ったあとでご自身の言動を省みて次に生かすことはできるのではないでしょうか。
偉そうですみませんでした。最後までお読み頂きありがとうございます。
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